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日本庭園林泉廻遊式書院庭
日本, 〒802-0082 福岡県北九州市小倉北区古船場町3−10

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明治二十二年に福岡県田川郡糸田町の「豊国(ほうこく)炭鉱」炭鉱主・山本貴三郎(貴族院議員)が建設した敷地三千坪にも及ぶ迎賓館施設に併設されていた日本庭園。敷地の二千坪が建物で千坪が庭園であった。当時の建物はすべてが失われたが、ニュー田川ホテル時代(現マイステイズホテルマネジメント、2019年10月リニューアル)の離れ棟で数寄屋建築「松月亭」は往時を偲ばせる唯一の日本建築となる。それ以外はすべて近代建築に建て替えられているが、ロビーラウンジ吹き抜けのガラス窓からは日本庭園が望め、西洋絵画などの調度品と美しく調和している。このような西洋美術品・庭園及び数寄屋建築などが調和して醸し出す美しさが、このホテルならではの大きな特徴となっており特別格調の高さをもたらしている。リニューアル時のインテリアはベルギーのデザイナーが担当した。明治二十二年に庭園が造られた当時の作庭家は不明だが、山本貴三郎が京都などから名のある庭師や大工を呼び寄せ、作庭・建築にあたらせた可能性が高い。この秀れた庭園と建築の存在は小倉以外にも知れ渡り、日露戦争直後にこの地を訪れた乃木希典は庭園内に建てられていた寝殿造りの建物に数日間滞在した。当初は千坪を誇った庭園はその三割を失い七百坪のみが残されたが、百三十年前の築庭当時の雰囲気を現在もよく残しており、松を主体とした庭木の構成は品格高い武家風で、二条城二の丸庭園や山口市・松田屋ホテルの庭園などが思い出される。池の南岸に滝石組があるが松の枝に隠れて見えなくなっている。池泉回遊式庭園の庭園形式はよく保存され、現在でも池の周囲を一周することができる。池は土橋を境に細くなり鑓水となって「松月亭」の前を流れ、その先で再び小さな池となる。水の澱みは見られず池全体の水の流し方が巧くいっていることは大きな感心に値する。池の水が巧く流れず澱んで蒼藻が発生し濁っている池泉庭園は今までに沢山見てきた。本来はこの池の水は敷地の東を流れる紫川から取水していたらしいが現在は不明。庭園の南に聳える足立山(標高597.8m)を借景としているが、周囲のビルで遮られホテルラウンジ吹き抜け2階から辛うじて望める程度となっている。リニューアルの際に新たに作られた?、池にせり出ずガラス張のテラス(屋外結婚式場)が庭園景観を著しく破壊しているが、ウェディング主体の経営ににより庭園が維持されるとしたら、残念ながらそれもやむなしと言わざるを得ない。(令和二年8月9日)

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  • 住所:日本, 〒802-0082 福岡県北九州市小倉北区古船場町3−10
  • 地点:https://art-kokura.com
カテゴリ
  • 庭園
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